【銅悠】銅橋くんはねむれない

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・高校生のつき合っている銅悠です。インハイ後くらい。【R-18】
・バッシーは寝付きが悪いと聞いたので。思わず更新してしまいました。

 
「あのっ、コレ……」
 真っ赤に染まったほっぺたと、風に揺れるロングのストレート。放課後に中庭で、と指定してきた彼女はかなりの勇気を持って今この場に立っているのだろう。おずおずと差し出された封筒はいじらしいほどに震えていた。
「ありがとう。でもオレ、今は部活が忙しくって。だからごめんなさい」
 素直に頭を下げると、女生徒は慌てたように「いいの、こっちこそごめんね。部活、がんばってね。応援してるから」と素直に退いた。
 スカートの裾を翻しながら女生徒が校舎の中に消えていく。それを見送る悠人の視界にチラッと見えた大きな背中。
 そういえばこの日は金曜日。中庭を越えた先には兄が託していったウサギがいて、金曜日は銅橋が餌をあげる日だった。
(やばっ……見られちゃったかな……)
 なんとなく罪悪感を覚えたが、告白を断っただけなのだから悠人が気にする必要はないはずだ。そうわかっていても胸のざわつきは治まらなかった。

*
 その日の消灯前、点呼を終えた悠人は足音を忍ばせて2年生の部屋がある階に向かっていた。
 トントンとドアを軽くノックして、返事が聞こえる前にドアを開ける。事前に連絡しておいたのに部屋の主はすでにベッドの中にいた。
「入りますよー?」
 すでに入っているのだが、念のため声をかける。それでも返事はなく、後ろ手にドアを閉めてベッドに近づくと思い切ってダイブしてみた。
「痛ぇっ……!」
 ベッドの中から唸り声がひとつして、悠人の下で布団がもぞもぞと動く。「てめぇなあ」と 顔を覗かせた銅橋は思った通りに不機嫌な顔をしていた。
(あーあ、やっぱり怒ってる)
 今日の部活中も銅橋の態度は最悪だった。それも、悠人にだけあからさまに怒鳴るので、先輩たちが心配して声をかけてくるくらいには酷かった。
『大丈夫っすよ。慣れてるんで』
『慣れてるって……』
『ホントに。大丈夫っすから。ね?』
 悠人がニッと笑ってみせると、先輩は怪訝そうな顔をしながらも『お前がそう言うなら』と、それ以上は何も言ってこなかった。
 そう、悠人はこの状態に慣れていた。
 おそらく昼に見かけた銅橋は、あの告白を見ていたのだ。そして、それを快く思っていない。でも、悠人も告白してきた女生徒も悪くないので、どこにも持っていけない苛立ちを自分の中にフツフツと溜め込んでいるのだろう。
(って、オレには思いっきり八つ当たりしてるんだけどね)
 睨んでくる銅橋にニッコリ微笑んで、
「銅橋さん一緒に寝ましょ? オレ、準備してきたんで♡」
と語尾にハートマークをつけてみる。それでも銅橋はフンッとだけしか答えない。
(あれ、まだダメか。それじゃあ次は……)
「ね、ベッド入ってもいいすか?」
 銅橋の返事も待たずに布団の中に潜りこむ。背後からキュッと腕を回して抱きつくと、銅橋は「許可してねーぞ」とようやく口を開いた。
「部屋に行くってメール送ったでしょ? 既読ついてたし、あれって許可してくれたんじゃないんすか?」
「……どんだけポジティブなんだよ、てめぇは」
「そんなオレも好きなくせに」
「……馬鹿か。つきあってらんねーな。オレは寝る」
「やだなあ。オレたち、もうつき合ってるじゃないっすか」
「うるせーな。黙って寝ろ」
 うざったいと言いたげに悠人の腕を振りほどき、銅橋が身じろいで距離を開ける。彼の背中を追いかけると再び銅橋が距離を開け、繰り返しているうちについには壁際まで追い込んだ。
「おい、遊んでんじゃねぇ! なんなんだてめぇは」
「何って、明日は部活もないし。ね、しましょ?」
 布団の中で上半身を起こし、そのまま銅橋の上にのしかかる。ウエスト部分に馬乗りになると、悠人を見上げている顔を両手で挟んで強引に唇を重ねた。
 固く結ばれた唇に尖らせた舌先を触れさせ、無理に開かせた隙間をゆっくり舐める。
「てめっ……」
「ん……はぁ……わかります? 勃ってんの」
 大きな唇に舌を這わせつつ、すでに硬くなっている性器を銅橋の身体にこすりつけた。
「……あ……こうしてるだけで気持ちいい」
 銅橋の唇のうえでわざと喘ぐと、舌打ちした銅橋が悠人の唇に噛みついた。大きな手でうなじを掴まれ、離さないとばかりに強い力で引き寄せられる。
 銅橋のキスは荒い。大きな口で容赦なく噛みついたり吸いついたりしてくるので、食べられてしまいそうだといつも思う。でも、彼の貪欲さを全力でぶつけられているような気がして、悠人は銅橋とのキスが大好きだった。
 荒い口づけを素直に受け止め、何度もキスを繰り返し、舌先をこすり合わせて、無言の時間を伸ばしていく。キスしたまま跨る位置をずらしてみると、尻の下に固いものが押し当てられた。
「銅橋さんの答えは聞いてないけど、イエスしかないですよね?」
「ったりめーだ」
「よかった」
 ニッと微笑んだ唇も、あっという間に食べられた。
 

**
「もっ、あっ……離し、てっ……ど、ばしさっ」
「誘って来たくせにもう弱音かよ」
「うっ……もうって……あんた、もう何回目だと思ってんすか……!」
 息も途切れとぎれな悠人に対して、銅橋は余裕たっぷりにニヤリと笑う。上になれと命令されて、繋がったまま騎乗位に体勢を変えた。
 銅橋の胸に手をつきながら腰を浮かせ、彼の陰茎の形をなぞるように深く腰を落とす。陰毛が尻にこすれるほど深く挿入すると、悠人と同じように銅橋も喉を反らして喘いだ。
「うっ……はぁ、くそっ……やべえな、気持ちいい」
「んっ、あ、オレも……どーばしさん、きもちよさそーで嬉しい」
 銅橋とのセックスは夏の終わりに覚えた。元々身体の相性が良かったのか、それとも愛ゆえなのか、割と最初の頃から痛みはなかった。何度も求められると、心も身体も満たさせるし気持ちがいい。愛されていると、そう思えた。
「悠人、悠人」
「はぁ、あ……っしさんっ、どーばし、さんっ」
「もうすぐ出る」
 銅橋の手が悠人の胸に伸び、指先が乳首をつまんだ。そのまま軽く引っ張られて、与えられた痛みが悠人に後孔を締めさせる。
「んっ……! ハハ、イッちゃうかと思った」
「痛ぇの好きだろ」
「んーん」
 首を左右に振って銅橋の手を掴み、引き寄せて手の甲にチュッとキスする。
「銅橋さんのだけ、好き」
「あ?」
「銅橋さんがくれるものは、なんでも好きっす」
 にっこり微笑んで見せると、銅橋は珍しく狼狽えた表情を見せた。彼の首元が急激に赤みを帯びていく。
「あれ、照れてます?」
「う、うるせー! 見んじゃねー!」
「うわ、マジっすか。照れてるんだ。可愛いなぁ」
「可愛いだあ!? んなわけねぇだろ、馬鹿かてめぇは! 可愛いってのはなぁ、オレじゃなくて昼のオンナみてぇな――……」
「え、昼の?」
 しまったという顔の銅橋が「なんでもねぇ!」と睨みながら手を伸ばした。
「見てんじゃねーぞ!」
「そんなこと言われてもなぁ」
「うっせ! 目ぇ潰されてーか!」
「それは困る。銅橋さんの可愛い顔が見れなくなっちゃうし」
「だから……てめぇ! チョロチョロ動くんじゃねぇ!」
 悠人の目を覆ってくる手を器用にかわす。よけるたびに後孔が締まるせいか、銅橋は観念して手を下ろし、切なげな吐息をついて悠人を見上げている。自分が中断させたくせに、彼の目は「早く動いてイかせろ」と訴えていた。
(こんなとこが可愛いんだよなぁ)
 悠人は両手を後ろについて、結合部分が見えるように体勢を変えた。ゆるゆると腰を動かしながら「銅橋さん」と呼ぶ。
「見えてます? ほら、オレのここ。銅橋さんとこんなに繋がってる。ね、わかるでしょ?」
「っだよ」
「オレの身体を変えたのは銅橋さんってこと。身体も、心も、オレの全部が銅橋さん仕様なんすよ。だから……」
 心配しないでいいと伝えたかったが、悠人はその先を言わなかった。
(このまま、オレだけに妬いててくださいね。って、可愛いから言ってあげない)
 銅橋の両手が悠人のウエストを掴む。肌に食い込む指の痛みを感じながら、奥深くまで貫かれて悠人は喘いだ。
 

***
 隣から聞こえてくる寝息を聞きながら、銅橋は暗闇の中で瞬きをした。
(寝れねぇ……)
 部活の疲労とセックスの余韻で身体はダルい。それでも、まだ眠気は訪れてくれない。
 原因はわかっていた。隣で眠る恋人、悠人だった。
 彼の兄があれだけモテていたのだから、似た顔の悠人がモテることは想定の範囲内だった。それでも、想像と、実際に目撃してしまうのではずいぶん違う。
(まさかこんなに嫉妬深ぇもんだとはな……まいったぜ)
 悠人に出会ったことで知ってしまった自分の一面。できれば知りたくなかったが、知ってしまったものは仕方がない。ただ、この感情との折り合いのつけ方を銅橋はまだ見つけられていないのだ。
 銅橋正清という男は、大きな体躯と不遜な態度に似合わず、案外生真面目な性格をしている。気になることがあると深く考えてしまうタイプだった。
 ほとんど自転車で占められていた頭の中に、いつからか悠人を想うスペースができてしまった。自転車と重なる部分があるせいか、じわじわと広がっていたスペースは今では半分に迫る勢いで銅橋の中を侵食している。
 嫌なわけではない。ただ、頭と気持ちがまだ追いついていかないだけ。
「わかっちゃいるんだけどなぁ……」
 悠人は彼の兄と似たようなところがあり、他人との距離感が近い。人懐っこい笑顔のせいか、油断すると思った以上に近くまで入り込まれている。恋愛ごとに疎い銅橋でさえ惹かれたのだから、外見だけではなく、彼の内面も含めて惹かれる人物が必ず現れるだろう。
(おいおい、オレはビビってんのか? まさか……いや、まぁ、そうなったときは腹ぁくくるしかねーんだけどよ)

『オレの身体を変えたのは銅橋さんってこと。身体も、心も、オレの全部が銅橋さん仕様なんすよ。だから……』

 寝返りをうって悠人の顔を覗き込む。生意気な恋人は銅橋の苦悩も知らずにのんきな顔で眠っていた。
「だから、の続きはなんなんだよ」
 はぁ、と深いため息をひとつ。
  
 銅橋正清は今夜もねむれない。
 

***END***

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