【新荒】番う【オメガバース】

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オメガバースの新荒です。タイトル通りにほぼ性行為しかありません。【R-18】
『いつか』の続きです。
※表紙はpixivのフリー素材(pixiv外使用OK)をお借りしています。
 
《注意書き》
かなりの自分設定に改変しています。ふたなり要素が強めです。
・オメガは男性のみ。アルファの方が希少
・Ωは生まれながらに外見的な陰嚢を持たない。体内に小さな精巣(1つ)と、卵巣(1つ)&擬似子宮をもつ。陰茎は通常通り備わっているので、女性とセックス可能
・成長と共に会陰部分に割れ目と穴ができる
・生理、自然排卵 なし
・半年に一度の発情期(番ができたら排卵を促すための薬を飲み始める→両者が合意の上での子作り。発情期以外でもセックスはできるが妊娠はしない)
・発情期がきたら体内の子宮部分が大きくなる
・男性妊娠からの出生率はまだそれほど高くない
・ホルモンバランスを調整するために毎日薬を摂取する必要がある
・Ωはうなじを噛まれた痛みで排卵する
・中出しすることでΩにツガイ相手の匂いをつけ、それがマーキングになる

 
1.
 日付が変わる直前に荒北の携帯電話を鳴らした相手は、地方遠征真っ最中の新開だった。
「よォ。こんな遅くにどーしたァ?」
『どうしたって……いつものメールがまだ来ないから、ちょっと心配になってな』
「心配って……たかがメールで大げさだろ」
『靖友にはたかがメールでも、オレにとっては大事なメールなんだ。今回のレース期間中もメールのおかげでいつも以上に走れたってとこもあるし』
「はぁ!? あんなんただの写真だぜ?」
『だからこそ、だよ。促進剤の数が減ってくのを見るたびにカウントダウンしてるみたいでさ、正直すげぇ興奮した』
「え、興奮って……オメーマジかヨ」
『ああ。ついに靖友とヤレるんだなって。薬飲んでるおめさんを想像してもヤバかったぜ』
「なっ、ハァ!? ば、バッカじゃねーの!?」
『そりゃあバカにもなるさ。何年待ったと思ってるんだ? なのにおめさんは今日に限って写真よこさねぇし……な、ラストの錠剤はちゃんと飲んだ? なんかすげぇ気になっちまって、このままじゃぐっすり眠れねぇよ』
「飲んだヨちゃんと! 写真送ってねーのはアレだ! なんつーか、その……急に照れくさくなったっつーかァ……ただそんだけだ」
『……靖友』
「なんだよ、急にマジなトーンで呼ぶんじゃねェよ」
『いよいよ明日だな。オレ、精一杯頑張るから』
「ハッ! 頑張るっておめーナァ……まァいい。期待しとくわ」
『昼過ぎにはそっち着くと思う。なるべく早く帰るよ』
「ん。わーった。帰り気ィつけてな。そんじゃ切るぞ」
『あ、靖友』
「あー? なに」

『愛してる』
 

 通話を終えるタイミングで囁かれた言葉は鼓膜を震わせて体内に流れ、そのまま心臓のど真ん中にストンと落ちた。身体の奥深く、擬似子宮がわずかに疼いた気がして、荒北の手が怖々と腹部をさする。
「……ったく、毎回毎回ご丁寧に歯ァ浮きそうなことばっかよく言えんナァ! どんなツラで言ってんだ、あの野郎は」
 自宅には自分以外に誰もいない。それでもこうして悪態をついてしまうのはただの照れ隠しにすぎない。
 あと半日もすれば、遠征を終えてオフシーズン入りした新開が数週間ぶりに帰ってくる。そして、ふたりにとって初めての繁殖休暇が始まる。
「ついに、か……やベェな。手ぇ震えちまってるぜ……ハァ……」
 意図しないため息が漏れてしまった。
 とっくに覚悟を決めたはずなのに、いざとなると決意が揺れる。
 発情期は無事に始まってくれるだろうか。飲み続けた排卵促進剤はちゃんと効いているだろうか。そもそも、新開は自分が相手で満足してくれるのだろうか。
 ツガイ届はとっくに提出済みで、新開と荒北は戸籍上ではすでにツガイになっている。だが、実際は通常のセックスさえまだ経験していない。そのせいかツガイになることへの不安がいつになっても消えてくれない。
「まぁ……今更ごちゃごちゃ考えてもしょうーがねェ。なるようになンだろ」
 自分に言い聞かせるようわざと声に出してみる。荒北は緊張と期待で汗をかいた手のひらを固く握りしめた。
 

*
 下腹部に違和感を覚えて目が覚めた。ひどい倦怠感と熱っぽさで身体が重い。枕元に置いていた携帯電話で時刻を確かめると、もうすぐ正午を迎えようとしている。
「あー……もう昼じゃねーか。そろそろ起きねーと……つーかダリィな」
 風邪とは違う種類の熱が頭の中をフワフワさせる。薬を使って無理に発情期を調整した影響なのだろう。喉が渇き、身体が怠くてしかたがない。
(……すぐヤるかもしんねーし、このまま寝て待ってるかァ?)
 新開が帰ってくればきっとすぐにベッドへ戻ることになる。でも、なんとなく身綺麗にしておきたくて、荒北はフラつく足取りで浴室に向かった。
 ノロノロと服を脱ぎ捨てていると洗面台に置いたままの薬のシートが目に入った。1シートに10粒の錠剤が並んでいたそれは、2枚ともすべてきれいになくなっている。昨日の電話で新開が気にかけていたもの。排卵促進剤のシートだった。
 
『なあ靖友。遠征中にコイツの写真を送ってくれよ』
『はぁ? 写真!? ヤダよメンドクセー』
『おめさんが飲み忘れないための提案だ。オレに写真送るって意識してれば、飲み忘れることもないだろうし』
『忘れねェからヘーキだって』
『いや、おめさんは絶対忘れるよ。何年一緒にいると思ってるんだ? 賭けてもいいぜ』

 結局断り切れず、薬を飲むたびに律儀に写真を送り続けた荒北は新開に甘い。だが、最後の一粒を飲み終えたときだけはどうしても写真撮影ができなかった。
 シャワーで寝汗を流し、念入りに身体を洗う。うなじは特に意識してゴシゴシといつも以上に強めにこすった。
(今日、マジで噛まれんのか……)
 満面の笑みを浮かべる新開の顔と、昨晩の声が頭をよぎる。

――『愛してる』

 愛情表現が素直な新開は甘い言葉をためらうことなく口にする。好きだとか、愛してるだとか、これまでにも何度も何度も伝えられてきた。昨晩に限って普段以上に甘く聞こえてしまったのは、発情期に備えてホルモンバランスが変化しているせいだと思いたい。
(ぜってーそうだ。じゃなきゃあんな……)
 昨晩の疼きを思い出した途端に視界が歪んだ。身体の内側、ヘソの下辺りに灯った熱が一瞬にして膨れ上がる。速度をあげる鼓動と、荒くなっていく呼吸。シャワーのお湯とは違った火照りが身体の隅々へ猛スピードで広がっていき、発情期が始まったのだと気づいたときには股間の割れ目がどうしようもなく濡れていた。
「嘘っ……だろ。ここでかヨ……とにかくこっから出ねーと」
 ボディソープの泡がシャワーで流れて肌を伝う。たったそれだけの刺激にも身体が反応してしまい、荒北の口から意図しない吐息が漏れた。
 なんとか浴室を出たところで携帯電話の着信音に気がついた。下着を穿いてTシャツに腕を通し、壁に手をつきながらのろのろと寝室に向かう。着信相手は新開で、震える指先でかけ直してみるとすぐに電話は繋がった。
『靖友、ごめん。寝てた? 今駅着いたよ。何か欲しいものがあればついでに買って帰るけど――
 新開の声が耳に優しい。まだ顔すら見ていないのに、荒北のΩ性がαである新開を強く求めている。
「しんっ、かい……はやくっ、なんもいらねェから早く帰ってこい」
『靖友? どうした、大丈夫か?』
「きた……はつ、じょう」
『……そうか。わかった。辛いだろうけど、あと少しだけ我慢な』
 通話状態のまま走りだしたのか、聞こえてくる音に雑音が混じる。次第に荒くなっていく新開の声と呼吸音が荒北の全身を耳元からゾクゾクさせた。
「ハァ……ん……しんかいィ」
『靖友、大丈夫か? オレの声ちゃんと聞こえてる?』
「んんっ……これ、マジでやべーな……オメーの声聞いてるだけでイッちまいそォ」
『……おめさん、この状況で煽るなよ。やっばいな……オレも興奮してきちまった。本気で走るからもう切るぜ。あとでな』
 返事をする前に切れてしまった携帯電話が手の中から落ちていく。鼓膜に残った新開の声が頭の中に反響していた。
(新開、新開……はやく……)
 もう彼のことしか考えられない。ベッドに倒れ込んだ荒北は、硬くなった陰茎を下着の上から強く握った。
 

2.
「靖友っ、大丈夫か!?」
 らしからぬ派手な音を立てて新開が寝室のドアを開けた。室内に踏み込んだ瞬間に発情したΩのフェロモンに当てられたのだろう。新開は少しだけ戸惑った様子でその場に手荷物を下ろし、「すげぇ濃い匂い……」と呟いて心臓付近を手で押さえた。
「やばいな……身体が熱い」
 新開が脱ぎ捨てた上着が床に落ちる。Ωの発情に誘発されてαのヒートが始まったのか、普段はほとんどしない汗の匂いが荒北の鼻先まで漂ってきた。
「新開……早くッ」
 荒北は理性を保てる限界をとっくに迎えていた。新開を目にした途端に我慢が吹き飛び、衝動的に手を伸ばして近づいてくる足を掴んでいた。
 ベッドの上から床へずり落ちて新開の足元に膝をつく。目の前の太い腿に縋りつき、強引にジャージパンツを引っ張った。
「靖友、ちょっと待――
「うるせェ、こっちはとっくに限界迎えてンだ。さっさとよこせ。オレに食わせろ」
 ジャージパンツを下着ごと膝までずり下ろし、硬くなりつつある陰茎を無遠慮に握る。両手で包んだ熱に顔を寄せれば、蒸れた濃い匂いに被虐心を煽られた。
「やべェな……クラクラする。たまんねェ」
 αのヒートと同調した身体が徐々に熱を上げ始め、吐き出す息も熱くなる。興奮気味に息を弾ませて大口を開け、思い切って根本まで一気に頬張った。陰毛の中に鼻先を埋め、ヒート状態で濃くなったαの体臭を肺一杯に吸い込んでいく。
「んむっ、んっ、ん……んん」
「うっ……! 口ん中、あっつい……」
 夢中になってしゃぶりついた陰茎は、しょっぱいような、苦いような、甘いような、不思議な味がした。本能に任せきった手荒な愛撫でも口の中の陰茎は充分に反応を返してくれる。それが嬉しくて、愛おしくて、荒北はしつこいくらいに舌を這わせた。
「はぁ、あっ……気持ちいい……」
 最初は戸惑っていた新開もすでに目の色が変わっていた。べちゃべちゃと唾液の音を立てて陰茎を吸う荒北を見下ろし、半開きになった唇から荒北と同じような熱い息を吐きだしている。たまに呻いては眉根を寄せて静かに目を閉じ、荒北の口内を犯すかのように腰を振る。
「んっ……! ん、うっ」
 喉奥を突かれるような律動的な動き。嘔吐感と息苦しさで目の縁いっぱいに涙が滲み、恨みを込めて頭上を睨む。しかし、目が合ったにもかかわらず新開は腰を動かし続け、荒北の頭を抱えるとさらに深くまで陰茎を押し込んでくる。ヒート中のαは暴力性が高まりやすいと聞いていたが、新開にもその症状が出始めているのだろう。
「んん! んぐっ、んっ、うう!」
「……ヤッバいな。止まらねぇ」
 ガツガツと喉を犯され、ひどく乱暴に扱われているというのに、荒北の身体は全身で快楽を拾っていた。えずく辛さも、呼吸がうまくできない苦しさも、髪を鷲掴みにされる痛みも、すべてが興奮材料に変わってしまう。硬く勃起していた陰茎は徐々に頭を垂れ始めていたが、Ω特有の人工的な膣穴がジンジンと熱を持って疼いている。いつの間にか自身の股間に手を伸ばしていた荒北は、ぐっしょり濡れた穴に指をくぐらせて自らを慰めていた。
(早くこん中にぶち込まれてェ……)
 空洞が疼いて気が逸る。その思いを込めて新開を見上げると、察したらしい新開が頷いて荒北の頭を離した。
 ちゅぽん、と音を立てて口の中の陰茎を吐き出す。唾液にまみれたソレが愛おしすぎて、陰茎を離した後も膣穴をいじる荒北の指が止まらない。夢中で陰茎に頬ずりしながら自慰を繰り返していた。
「靖友、立てる?」
 荒北の頭を撫でていた手が肩を掴む。促されて立ち上がろうとしたが、腰がグズグズの荒北はうまく足に力が入らない。新開の肩を借りてベッドにのぼると、ふたりとも服を脱ぎ捨てていった。
「……オレがまともなときに抱いておくべきだったな」
 荒北の股の間に身体を入れた新開が独り言に近い声で呟く。
「何?」
「今はヒートのせいでフツーじゃない。初めてだってのに、おめさんを優しく抱いてやれねぇ」
「あ? 優しくゥ? んなもん求めちゃいねェ。何でもいいから早くヤッてくれ」
 埋められたい部分がヒクつきっぱなしで気持ちが悪い。早く新開を飲み込みたくて、とろとろにとろけている。荒北は自分の膝裏を掴んで足を抱えると、「はやく、ここ」と股を広げて新開を誘った。
「すごいな……太腿まで溢れてる……」
 膣口から伝い落ちた液体の跡を新開の指がゆっくり辿る。
「うぅっ……はやく……はやくしろ」
 触られるだけの愛撫がもどかしくてたまらず、なかなか挿入されないことに荒北は焦れていた。高校2年で初めて発情期を迎え、あれ以降は薬に頼って発情を抑えてきた。久しぶりの発情期を迎えた今、懐かしさと苦しさと愛おしさで理性が擦り切れそうになっている。
 新開のモノで貫かれ、奥深くまで犯してほしい。うなじを噛まれ、αの精子を身体いっぱいに注がれ、オレだけの物だと示すように新開の匂いでマーキングしてほしい。形だけではなく、早く本物のツガイに。早く、一刻も早く。
「はや、くっ……しろっての……!」
 荒北は自身の両足を抱え直すと、火照ってぼってりした割れ目を新開に見せつけながら左右に開いた。晒された膣穴が新開の視線を受けてひくつき、それだけでとろりとしたものが溢れてくる。どれだけ濡れているのかは触って確かめるまでもない。ヌルついて滑る穴にゆっくり指を挿れてみせると、ゴクリと喉を鳴らした後で新開が小さく笑った。
「こっちは余裕ねぇって言ってんのに……おめさんずいぶん余裕だな」
 濡れそぼった穴に亀頭が触れる。パンパンに張った硬さや熱、見下ろしてくる新開の視線。それを感じただけで荒北はすでにイキそうだった。新開が吐き出す呼吸も、脈も、心臓の音も、体温も、彼のすべてをΩの身体は貪欲に拾う。呼吸が肌に触れただけで甘い電流が走るというのに、余裕などあるわけがない。
「新開、はやく――あ……っ!?」
 早くしろと言いかけて、その言葉が荒北の唇を割ることはなかった。疼いてどうしようもなかった膣の奥深くまで一気に埋められ、コツンと体内の何かに当たった感触と共に荒北の目の前が真っ白になった。
「あぁっ!? あ、あっ……!」
 身体の末端までチリチリと痺れる感触。のけ反ったせいでシーツに押しつけていた背中が浮いた。爪先はぎゅうっと丸くなり、血色を失くした手の指が抱えた両腿に食い込んでいる。無意識に呼吸を止めてしまっていたらしく、真っ白な波が引いていくと途端に息苦しくなって咳きこんでしまった。酸素不足から視界が霞む。涙混じりの目で見上げると、荒北を見下ろしたまま新開は容赦なく腰を振っていた。
「靖友……ん、うっ……」
 覗き込んでくる瞳は普段の新開の目ではない。荒北同様に彼もまたとっくに理性を失っていた。強い欲情に支配された、射貫かれるような視線が気持ちいい。αの匂いに抗えず、組み敷かれた上にめちゃくちゃに身体を揺さぶられ、服従に近いこの状況にさらなる興奮を覚えてしまう。
 荒北は自身の足を離す代わりに目の前の首に腕を回した。新開の後頭部を掴み、髪を握って引き寄せる。キスをせがんで下唇に噛みつくと、手荒な仕草で顎を掴まれて肉厚な唇が呼吸を塞いできた。
 舌をすり合わせ、唾液を吸い合い、顔の角度を変えて深く求める。収縮を繰り返すイッて間もない膣穴を突かれながら、呼吸する間も惜しんで唇を繋げた。
「なぁ、新開ッ……まだっ、か……? んん、はぁッ、なァ?」
「もうすぐっ……でそうだ」
「うっ……んじゃあ、ちゃんと噛めよ」
 頭をもたげて新開の肩にわざと噛みつく。噛んだ部分から耳へ向かって舐め上げると、荒北の耳元で新開が喘いだ。
「でそっ……だから、ちょっと離してくれ」
「あぁ? っんでだよ」
「このままじゃ噛めないだろ? 一回抜いて体位変えよう」
 抜くと言ったくせに、荒北が腕を離した瞬間を狙って新開が深い部分まで突き上げた。
「あっ……!」
「奥、きもちいいな」
「てめっ……抜くって――んんっ!」
「悪い。一瞬でも離れちまうのが名残り惜しくて。つい」
 口先だけの軽い謝罪と、まったく悪いと思っていない顔。ようやく新開が身体を離して荒北の中から陰茎を抜いた。
「なんか……変な感じィ」
「変?」
「……オメーの、まだ入ってるみてェ」
「痛みはねぇの?」
「へーきだ……むしろスゲーイイ」
 だらけきった荒北の足を撫でる手が止まる。「よかった」と呟いた新開は荒北の内腿に乗せていた手を滑らせ、いやらしく充血した割れ目を撫でた。
「んんっ……!」
 ゆっくりした動きで指が割れ目の奥に潜ってくる。
「なっ……指ッ!?」
「すげぇ熱いな。ヌルヌル……オレの指に食いついてくる」
「んっ、ん、あっ……クソッ、てめェっ搔き回すんじゃねぇ! 今いじられたらっ……」
「たら?」
 2本、3本と増やされた指先が柔らかな膣壁を攻める。特に敏感な部分を掠めた瞬間、荒北は今までになく高い声で喘いでしまった。
「……ここ、気持ちいいんだな?」
「ちげぇっ……てェ……! んっ、あ、ハァ、アッ」
「どんどん濡れてくる……おめさんもわかるだろ?」
 指が荒北をいじめるたびに淫らな音が股の間から聞こえてきた。弱い部分を的確に攻められるせいでひっきりなしに漏れる声が止まらない。陰茎で突かれる快感とはまた違った刺激が下半身をどろどろに溶かし、荒北は再びの絶頂を迎えようとしていた。
「それッ……いじくんなって!」
「オレだけ舐めてもらったのに靖友には何もできてないし、チンコ挿れるだけじゃ物足りないだろ?」
「いいからっ、やめ……ろッ」
 内腿がピクピクと痙攣し始めている。股を閉じて膝を揃えても、指から逃げようとして身体をよじっても、なんの抵抗にもなっていない。このまま新開の指に任せてしまえば2度目の絶頂はすぐにくる。それでも荒北は息絶えだえになりながら「指はもういい」と新開の手を掴んで止めた。
「気持ちよくない?」
「そーじゃねェ」
「痛かった?」
「ちげぇ……早く……」
「ん?」
「……早くお前のツガイにしてくれ、新開」
 体内で新開の指がピクッと反応した。「うっ」と喘ぎつつ指を引き抜かせた荒北は自ら四つん這いになって足を開き、股の間に左手を差し入れて「挿れてくれ」と煽るように膣穴を拡げた。
 息を飲んだ新開が無言で近寄る。尻に手が乗り、膣穴に添えている荒北の指先に亀頭が触れた。プチュプチュと粘ついた音を立てて亀頭が埋まり、荒北の指にこすれつつ膣の中に埋まっていく。指先に陰毛の感触を感じた荒北はすべて埋まったことに満足して指を離そうとしたが、今度は新開が荒北の手首を掴んで離さない。
「……そのまま触ってて」
「あ?」
「繋がってるとこ、そのまま触っててくれ」
 新開が荒北の手に手を重ね、ふたりが繋がっている場所をしっかり確かめさせるように押しつけてくる。抽挿が開始されると穴に出入りする陰茎がふたりの指にこすれ、同時に、溢れてくるとろみがかった卑猥な液でどんどん指が濡れていく。
 突かれるたびに膣と指先に力が入った。体内で陰茎を締めつけ、指先で表面を挟み込む。途切れ途切れに喘ぐ荒北は2度目の絶頂を迎えようとしていた。
「しんっ……も、イク……イク」
「んっ、オレも……でそうだ」
 押さえていた手を離した新開は荒北の両脇の下に腕を入れると、強引に抱き起こして膝をついた立ちバックのような姿勢に変えた。背後から抱きしめられるせいでふたりの背中と腹部が強く密着し、新開の速い鼓動が荒北の背中を叩いてくる。
「ひッ!? これぇっ、深……いぃ!」
 体制を変えられたことで、さらに深く陰茎を咥えこんでしまう。脳天まで侵されてしまいそうな強烈な刺激を受けて、思わず荒北は天井を見上げてのけ反っていた。
「ああっ、ヤ……めっ、奥、あ、あッ、あぁッ……!」
「ううっ、すげぇ締まるっ……」
「ヤダッ、奥、おくっ……しんかいっ、しんかい!」
 経験したことがない強い快感が怖い。なんとか逃げようとしてもがいても新開は腕を緩めず、容赦のないピストン運動で攻め立ててくる。腰が砕けそうになったとき、反らせたままの喉を掴まれて激痛がうなじに走った。
「あぁっ!? あ――……!」
 噛まれた、と気づいた途端に荒北もまた気が遠くなるほど暴力的な快楽に襲われた。噛まれた痛みはすぐに消えたが、その代わりに、わけのわからない感情が次々に身体の奥から湧き出してくる。掻き毟りたいほど喉元がむずむずし、胸が詰まり、泣きたくて笑いたいような複雑な感情。快感に喘ぐ声すら出てこない。
「……やっと……なれたァ」
 それだけ言うのが精一杯で、荒北は新開の腕の中でいつまでも静かに咽び泣いていた。
 

3.
 一度身体を重ねた後は、発情期が終わる7日目まで気が狂ったようにセックスし続けた。
 発情モードに入ったΩはふとしたタイミングで欲情する。朝食を採っている最中だったり入浴中だったり、時と場所を選ばない。新開も荒北も休暇を取った一週間はずっと自宅にこもりっきりで、荒北が発情すればその場ですぐに身体を重ねた。
 4日目までは理性のコントロールが効かず、本能に任せて散々求め合い、終わった後はぐったりしてほとんど動けずにいた。Ωフェロモンが落ち着いてくる5日目に入ると欲情する回数も減り、相手の反応を確認しながらのゆったりしたセックスができるまでになっていた。
 だが、荒北にとってはその5日目からがきつかった。
 理性が吹き飛んでいる状態だったなら、どんな痴態を晒しても気にならなかった。しかし、意識がハッキリした状態でのセックスは、股を開いたり高い声で喘いだり、これまで当たり前にしていたことに恥ずかしさを覚えてしまう。特に、膣穴を舐められる行為がこの上なく屈辱的でたまらなかった。
「オレも舐めたい。なぁ、舐めさせて」
 うん、と頷く前に新開は荒北の股を無理に開いた。股の間に身体を屈め、荒北が嫌がっても舌先を動かし続ける。特に入浴中は浴槽の縁に座った状態で長い時間をかけて舐められた。浴室内に反響する自分の喘ぎ声とぴちゃぴちゃした水音に耳を犯され、全身の力が抜けてしまうほど甘やかされた。
「しんっ、か、いッ」
「んー?」
「う……なぁ、もーいいだろォ? はぁ、あっ、うんんっ……! はやくっ……挿れろって」
「まだ。もう少し」
「あぁッ! チンコくわえっ……んなぁッ……! うっ、あ、はぁ……あぅっ」
 ゆるく溶けた膣穴に指が潜り込み、わざとらしい音を立てて中を掻き回してくる。指でいじられた上に陰茎を咥えられ、たまらず荒北は腰を浮かせて抵抗した。フェラチオをやめさせようとして髪の毛を掴んでも新開は咥えたまま離してくれない。涙声の荒北が「挿れてくれ」と挿入をねだるまでそれは続き、ようやくの挿入を迎えた頃には恥ずかしいと思いながらも情けなく喘いで乱れるしかなかった。
 
 
「噛み過ぎて腫れちまってるな」
 7日目の夜。
 リビングのソファーに座ってテレビを見ていると、風呂上りの新開が荒北の背後にやってきた。辛そうな顔をして恐るおそる手を伸ばし、そっとうなじに触れてくる。
「痛む?」
「いや? ちょっとアチィけど、痛くはねェな」
「そうか、よかった。加減がわからなくて何回も思いっ切り噛んじまったから」
「必要なんだし、しょうがねーだろ。んな顔すんなよ」
「うん……」
 噛まれた荒北よりも、噛んだ新開が痛そうな顔をしている。彼のその表情がおかしくて、荒北は「ここ座れ」と笑って手招きした。
 αは射精に合わせてΩのうなじを噛む。すると、その痛みが引き金となってΩの体内で排卵が起こる。一般的には一度噛めば大丈夫だと言われているが、ふたりにとっては初めてのセックスだったこともあり、特に新開は不安だったのか何度も荒北のうなじを噛んでいた。
 隣りに腰を下ろした新開が荒北を抱き寄せてうなじを撫でる。軽く唇を押しつけて「ごめんな」と申し訳なさそうに囁いた。
「なぁ新開」
「ん?」
「できてるといいな」
 ニッと笑って自身の腹部を撫でてみせる。しかし新開は表情を曇らせたまま変えない。
「ちょっと気が早いんじゃないか? Ωの妊娠率はまだ低いし、今回でできたら奇跡みたいなもんだぜ?」
「うっせ、できてなかったらそんときはそんときだ。また一週間こもってヤりゃあいい」
 大げさに、かつ、軽めに腿を叩いてやる。すると、ようやく新開が表情をゆるめた。
「……それもそうだな。今度はもっと食糧を買いこんでおくよ。後半なんかヤッてる最中に腹減って大変だった」
「あー、買いに行けなかったもんなァ」
「ああ。おめさんが離してくれなかったからな」
「それはオメーだろ」
「いや、おめさんだ」
 言い争っても終わりが見えない。お互い様だと結論づけて、不毛な争いからは早々に手を引くことにした。
 フッと穏やかに笑った新開が荒北の手を握る。
「いつか靖友と一緒に子供の手ぇ握ったりすんのかな」
(ん? なんかそれ……)
 既視感が荒北の頭をよぎる。いつだったか似たようなことを考えた気がした。
「まぁ、それは“神のみぞ知る”ってヤツだな。信じて待つしかねェんじゃねーの?」
 荒北の言葉を受けて、新開が不思議そうな顔で首を傾げた。
「……なんだヨ」
「おめさんの口から神様なんて言葉を聞くとは思わなかったな」
「うっせーなァ。たまには信じてみたっていいだろ!? いちいちツッコんでくんじゃねーよ」
 睨みつける荒北に新開が目を細めて応える。元から垂れた目尻をさらに下げて、「早く会いに来てくれよ」と荒北の腹部に声をかけた。
(オレとコイツの家族、か……)
 いつか迎えるかもしれない未来の家族。そのための第一歩として新開と荒北は本物のツガイにようやくなれた。うなじに生じた熱は誇らしくもあり、なんとなく照れ臭くもある。
「……何してんだオメーは」
「ん? 甘えてんだぜ」
「甘えてって……でっけーガキだなァおい」
 いつの間にか荒北の腿に頭を乗せて寝ころんでいた新開の髪をクシャクシャに撫でる。突然の攻撃にビクッと身体を揺らした新開が恨めしそうに荒北を見上げた。
「今だけならいいだろ?」
「へぇ。ガキができたらしねーってェ?」
「ああ」
「ほんとだな?」
「……善処するぜ」
「ハッ! 言ったな?」
 問いかけても新開は答えない。下から手を伸ばし、荒北のうなじを優しく押さえた。
「なんだよ」
「今はまだオレだけのもんだ」
 ニッと笑った新開が頭をもたげてキスをねだる。荒北はうなじを覆う手のひらの温かさを感じながら、身体を屈めて嬉しそうに笑った。
 

***END***

-ペダル:新荒
-, , , ,

int(1) int(1)